あっちゃんずぶろぐ3

自作の詰将棋とかいろいろ

あっちゃんの大道棋研究 - 2 「なし2類型」の研究 基本編

「なし2類型」とは


持駒なしの類型はいくつかありますがそのうちの1つです。
元ネタと思われるものから紹介していきましょう。
将棋図巧の第31番が起源と言われています。
というわけで図巧31番をまずは御紹介。

f:id:acchan3:20200914235652g:plain

本手順
83香成、同玉、84飛、72玉、63桂成、同角、73飛、81玉、71銀成、同金、92金、同玉、74馬、同角、94飛、81玉、92飛成、同玉、84桂、81玉、71飛成、同玉、72金、
まで23手
「本手順」と記載したのは変化長手数のキズがあるため。古典詰将棋ではよくあることです。
本局の詳しい変化紛れ等は詰将棋博物館でご覧ください。


それはさておき途中図を再掲。

f:id:acchan3:20200914235737g:plain



この図がなし2類型の基本図となります。
さらに2手戻した図

f:id:acchan3:20200914235810g:plain



こちらを展開したものもいくつか作られているのですが省略します(どれも92金、同玉が入るだけの「逆算」に過ぎません)。

 

基本図は変化長手数のキズがありますが、大道棋屋さんとしては74馬を見つけられた時点で降参、後はキレイに詰まされようという心意気ではないかと想像します。

 

次に作例をお見せしましょう。


秘手500番第9番

f:id:acchan3:20200914235846g:plain


73飛、84飛が龍にかわり持駒桂が玉方の94桂にかわっています。あとはちょこっと変形されています。そのちょこっとに本当は意味があるのですが(笑)

 

とっかかりとして
1 基本図手順の74馬
2 93龍上と入って94桂を残す手
3 94龍で持駒として桂を入手

ぐらいでしょうか。


1 74馬は同角と取ってくれれば94龍、81玉、92龍以下基本図の手順で詰みます。
しかし、冷静に81玉と引かれてみると54銀がよく働いていて詰みません。


2 93龍上と入ってくるのはちょっと強い人。81玉の一手に91龍、同玉に71龍でどうだ!香合などの合駒には83桂とし、同歩なら82金。92玉には93金迄。ということで81への合駒を桂にされてみると今度は詰まず。残念でした。


3 94龍と桂を取る。これが実は正解。81玉の一手に91龍、同玉と進めます。ここで71龍と慌てて取ると先ほどの81桂合でまた奉納になってしまいます。83桂が正解。取れない(取ると82金迄)ので92玉ですが84桂と打ち、93玉に72桂成。ここまで行けば簡単でしょう。92玉に82成桂、同金、91桂成、同玉、93龍、92合、82金迄。お見事。

 

本来ならもう少し作例を紹介しておきたいところなのですが、困ったことに、この類型、秘手500番に何局か載っているのですが余詰作が無茶苦茶多いのです。配置が大きく広がったものも散見されて自信をもって例題として使えそうなのは僅か。興味ある方は詰将棋博物館に秘手500番が収録されていますのでご覧ください。(余詰作多いので注意)


ところで、大道棋のバイブルというべき「大道棋奇策縦横」には本類型は掲載されていません。なぜ掲載されなかったのかはよくわかりませんが形幅清氏に改作する気が起きなかったというのが最も大きな理由と思います(形幅氏が改作に取り組めばもっと大作ができていたはず)。しかし余詰作が多かったというのも一因ではないでしょうか。

自作を交えて例題を増やせば内容は膨らみますがそれはまたの機会に。